お宮参り初着(産着)・お宮参りの歴史について
古来、赤子の命ははかないものでした。やっと世に出たその命が、わずか二日三日で果ててしまうなど日常茶飯事のことでした。
人々は何とか赤子が天に召されることがないように、悪霊の目につかないようにと祈りました。そのために生まれてきた子にわざとお古のぼろ着物を着せたりしました。
また自分たちが生んだ子ではない、拾ってきたんだと言い繕うために、幼名を「お捨て」、「拾い」などのようにしました。
そんな赤子が何とか生を永らえ、人生を自分の力で生きていける気配が見えた時、赤子は生後はじめて氏神様に御参り(お宮参り)して氏子となります。男児31日目、女子32日目に参ることが多いですが、モモカマイリといって100日目にお参りする地域もあります。
赤子は里から贈られた初着(うぶぎ)(産着)を掛け衣装としてまといました。男児には熨斗目(のしめ)、女児には柄模様の晴着を着せました。社前に御神酒と赤飯を供え、赤子をつねって泣かせることで神様に印象づけ、これからの御加護を祈りました。
このお宮参りの行事が済んで、氏神様に認めていただいく事により、赤子ははじめて村の一員となることが出来ました。
お宮参り初着の基礎知識
お宮参り初着(産着)には赤ちゃんが健康に健やかに育ってほしい、その祈りが形や柄になって表現されています。女の子は優しく美しく、男の子は凛々しく逞しく、親の願いが結晶となって表れています。
その想いが伝わってくるような初着が良い初着なのではないでしょうか。
柄ゆきについて
現代では、男児お宮参り初着は兜や鷹の柄がポピュラーです。
女児お宮参り初着には御所車や手鞠、小鼓の柄が花で囲まれたものが多いようです。また熨斗の柄も人気です。
その他にも、古典から現代に至る様々な物・文様が、柄となって表現されています。自分の感性にマッチした自分の一枚を見つけて下さい。
生地及び加工について
絹織物の生地には大きく分けて、無地系の精華・銀無地・変わり無地タイプと、文様を織り込んだ綸子タイプとに分かれます。また光沢、手触り等も様々で千差万別といえるでしょう。どの素材を選択するかは、何をどう表現したいかによって決まります。
「染め」は大きく分けて型友禅、手描友禅、の2タイプがあります。それぞれにさらに様々な染め技法がありますが、手描友禅は全体に柔らかい雰囲気に仕上がります。
一般的に手描友禅の方が型友禅より高くつきます。また手描友禅の方が生産ロットが小さくなります。また絞り染めによって染め上げる技法もあります
染加工の後、さらに刺繍や金彩を施しより華麗にすることも多いです。
京の初着屋のお宮参り初着はすべて表生地に絹100%を用いています。
また盛夏(7.8月)用に絽のお宮参り初着も用意しています。
家紋について
男の子の初着には家紋を入れます。両胸2ヶ所・背中1ヶ所・裏側両袖2ヶ所の計5ヶ所に紋を入れる「五つ紋」で紋入れします。紋は嫁ぎ先の家紋(父系の家紋)を入れます。(詳しくはこちら)
弊社ではこの五つ紋を上絵紋又は摺込み紋(刷り紋)で紋入れいたします。通常は白色で入れます。
レンタルによくある貼り紋は用意していません。
女の子の初着には一般的に家紋は入れません。
入れたいという希望がある場合には、背中に1ヶ所入れる「一つ紋」をお勧めしています。嫁ぎ元(母系)の紋を入れることが多いです。
女物初着は柄がバラエティーに富んでいるので、紋が入っても柄とのバランスが崩れない初着を選ぶ必要があります。
お宮参り初着の着せ方
- (1)まず前もってしつけ糸をはずしておきます。ただし「付け紐」を衿部分に留める化粧糸は外してしまわないように注意しましょう。
- (2)化粧箱から取り出し、折り筋を消すために和装ハンガーに掛けておきます。
- (3)アイロンをかける場合は、絹の温度設定で「当て布」をあて用います。アイロンのスチーム噴射を使うより、当て布を軽く濡らしアイロンの熱で布の湿り気を蒸気にした方が良いと思います。スチームが水滴になって生地にポトリと落ちるとシミになってしまうので注意しましょう。
絞り製品はご家庭でアイロン掛けすると絞り目を伸ばしてしまう可能性があります。アイロン不可です。プロに任せましょう。お宮参り初着の着せ方 - (4)当日は和装のでんちセット(抱き着)又は洋装のベビードレス姿で神社にむかい、境内で初着を赤ちゃんを抱っこした上から掛けます。
- (5)初着の襦袢は通常は付けておきますが、夏季ははずした方が涼しくて良いと思います。
- (6)初着に付属の付けヒモをお母さんの肩から背中にまわししっかり結びます。
その際、縁起物の扇子(末広)、お守り等を初着の紐からぶら下げても良いかと思います。(吊り下げ画像はこちら)
"京の初着屋"のお宮参り初着には帽子(フード)、よだれ掛け、扇子、お守り袋を無料でお付けしています。それらをどうぞご利用くださいませ。
着用後のお手入れ
着用後は和装ハンガーに掛け、ブラシをかけほこりを払い、湿度が低い日を選び、屋内にて十分に風を通し湿気を取り除きましょう。
シミ・汚れがあるときは早く抜くことが肝要です。着物の扱いに慣れた白洋舎等信用のおける業者に依頼しましょう。
着物に用いる金銀箔は硫黄分を含んだものと一緒にすると変色します。ナフタリン、金属品、ゴム製品等と一緒にしないで下さい。
防虫剤等は着物専用のものを用いましょう。虫が付きやすいウールの着物と混ぜて保管するのは要注意です。
お宮参り初着のたたみ方
使用した後のお宮参り初着は下記の通りたたみましょう。
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1.肩山を左にして平らに置きます
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2.手前にある下前身頃を脇の縫い目に沿って折り後ろ身頃の上に重ねます
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3.向こう側にある上前身頃を重ねます。紐は左右の紐を重ねてたたみ着物の上に垂直に置きます。
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4.重ね合わせた身頃の上に右袖を重ねます
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5.左袖も重ねます
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6.最後に納める箱に合わせて縦に半分に折ります
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7.箱に入れて完成です
着物と襦袢は重ねて畳んでも、別々でもどちらでもかまいません。
女児お宮参り初着を3才七五三に使うには
女児用初着は3才の七五三に利用できます。そのためには身上げの加工を行う必要があります。
【3才女児七五三用品ページ】
- (1)襦袢のつけ袖(女児は赤色、男児は水色の袖)をはずします。
- (2)袖は手を通す部分を除き綴じます。袖の下部部分は袖らしく丸みを付けて縫い込んで下さい。(難しければ二ヶ所ほど袖を綴じるだけでも可)
- (3)肩上げをします。
- (4)腰上げをします。縫い目が下にくるように縫います。両端を1~2cm持ち上げ気味に縫うときれいに見えます。
- (5)結び紐は外さず残しておき、付け紐(腰紐)として利用しましょう。
身上げの加工はお母さんの手縫いで十分仕立てられます。京の初着屋では弊社にてお買上げの初着にかぎり、有料にて上記の身上げ加工を承ります。注文ページをご覧下さい。
着物に被布コートまたは結び帯とあわせて、かわいく決めてあげて下さい。なお7才での着用はサイズ的に無理です。
男児お宮参り初着を七五三に使うには
男の子の場合、三才七五三では着物と袴又は着物と被布コートで、五才七五三では羽織と着物に袴をあわせて着用することが多いようです。
男子の場合それらを別途用意する必要があります。【3才男児七五三用品ページ】 【5才男児七五三用品ページ】
初着を3才及び体格にもよりますが5才の七五三の着物として利用することが可能です。
京の初着屋では改めて五才用(四つ身サイズ)のお着物を購入していただかなくてもいいように初着のお袖を丸みを付けて、身上げ加工を施し、七五三用の着物としてもう一度ご利用されることをお薦めしています。(初着の背中には模様がありますが、羽織として仕立換えをすることはサイズ的に不可能です)
五才男児では体型によって着物の胸の合わせ目が多少ははだけるケースもありますが、上から羽織を羽織るので問題ないと思います。
男児初着を七五三の着物としてお使いになる場合、
- (1)まず実際に着物をお子様に着せてみて、肩上げ、腰上げが必要かチェックします。
- (2)襦袢の付け袖を外します。
- (3)袖は手を通す部分を除き綴じます。
(羽織を着用すると見えないので、難しければ二ヶ所袖を綴じるだけでも可) - (4)必要に応じて肩上げ、腰上げをします。
- (5)結び紐は外した方がよいと思います。別途腰ひもを使いましょう。
お母さんの手縫いで身上げの加工は十分できますす。
京の初着屋では弊社にてお買上げの初着にかぎり、有料にて上記の身上げ加工を承ります。注文ページをご覧下さい。
三才用の被布コートは着物とメリハリがつくお色が可愛らしいと思います。
羽織は着物と地色が同系色か全く違う色のものを用意されると良いでしょう。着物と羽織の柄が異なっても、着物の柄は羽織と袴で隠れてしまいますので、それほど気にする必要はないかと思います。
着物に羽織と袴をあわせて、凛々しく決めてあげて下さい。